カンナビジオール
CBD(カンナビジオール)は、1940年に発見されたフィトカンナビノイドで、大麻草に見られる天然に存在するカンナビノイドの1つ。カンナビジオール酸前駆体から作られますが、化学合成で作ることも可能です。
良好な安全性の特徴、忍容性があり、△9-テトラヒドロカンナビノール(以下THCと表記)のような精神作用はなく、乱用、依存、身体依存、耐性は見られません。ヒトにおけるCBDの安全性に関して行われてきた複数の研究では、1500mg/日を長期投与しても大きな問題はなく、十分な忍容性が認められています。一方でチトクロムP450を阻害、培養細胞の生育に影響を及ぼすことなどが知られています。副作用は重篤なものは報告されていませんが、眠気、吐き気、疲労といったものが見られます。
主な作用としては、抗炎症、制吐作用、食欲増進、鎮痛、抗不安、不眠などが挙げられます。ヒトを用いた二重盲検試験のレポートは少な学的根拠が乏しいと言われますが、動物を用いた試験やオープン試験ではいくつかの有効性が見られており、今後さらに研究が進むことが望まれます。
CBDを効果的に摂取する方法は、CBDオイルの舌下への投与、ヴェポライザー(電子タバコ)を用いた吸入摂取が挙げられます。消化管からの吸収は6~8%と低いことから、海外のサプリメントではナノ化したCBD原料が利用されています。この技術により体内への吸収は20%以上になるという報告があります。
CBDは内用だけでなく、外用としても非常に有用な成分です。鎮痛、抗炎症以外に、抗酸化、抗アクネ、皮膚保護作用、肌のくすみの改善があり、発毛にもCB1受容体拮抗薬が有効である可能性が示唆されています。湿疹や乾癬についてはさらに十分なエビデンスが必要です。
有効性があると
考えられる疾患(一部)
- アルツハイマー病
- パーキンソン病
- 精神障害
- 多発性硬化症
- ハンチントン病
- 抑うつ
- 低酸素虚血性脳障害
- 吐き気(悪心)
- 疼痛
- 炎症性疾患
- 不安
- がん
- 関節リウマチ
- 感染症
- 炎症性腸疾患とクローン病
- 心血管疾患
- 糖尿病合併症
臨床研究中の
他の治療適応
- 慢性の痛み
- 不安
- PTSD
- アルコール使用障害
- 双極性うつ病
- スタージ・ウェーバー症候群
- による難治性発作
- 急性移植片対宿主病(GVHD)
- 精神病
- 統合失調症
- パーキンソン病(振戦)
- 炎症性腸疾患
- オピオイド再発の治療介入
- コカイン渇望/依存症
- ヘロイン禁欲
- クローン病
- Gastroparesis胃不全麻痺
- 消化不良 など
エンド・カンナビノイド・システム
エンドカンナビノイドシステムは、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、魚など、すべての脊椎動物に存在し、体の恒常性、つまり環境の変化に応じた生物学的調和を維持すると考えられています。
痛み、記憶、気分、食欲、ストレス、睡眠、代謝、免疫機能、生殖機能などのさまざまなプロセスに関与していることが研究により明らかになっています。エンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)は間違いなく人に知られている最も広範で用途の広いシグナル伝達分子の1つといえるでしょう。
エンドカンナビノイドは、1992年ブタの脳からアナンダミド(またはN-アラキドノイルエタノールアミド)と呼ばれる成分が抽出・同定されています。その後、1950年に2-AGが同定され、これら2つが生理的に主要なエンドカンナビノイドと考えられています。
日本の規制
日本にはCBDに関連するいくつかの法律があります。
ここではいくつかその法律について説明をしていきます。
大麻取締法
■第一章 総則
第一条 この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
第三条大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。
2,この法律の規定により大麻を所持することができる者は、大麻をその所持する目的以外の目的に使用してはならない。」(一部抜粋)
現在国内で流通しているCBDは「成熟した茎と種子」から抽出したものています。なぜ「成熟した茎と種子」が除かれるかというと、麻薬であるTHCが含まれていないからです。THCは主に大麻草の樹液に含まれています。そのため、有害性が低い「茎と種子」が除かれたということです。
◆大麻草の部位と用途
一方、第三条では、大麻の使用が記載されていません。これは、使用が認められている「茎と種子」にもごく微量THCが含まれる場合があるからです。国内ではCBDアイソレートパウダーが流通していますが、「成熟した茎と種子」のみを使用して製造しているか確認できるのは、書類一枚のみとなっています。現地のCBD輸出企業は原料を売るために、偽造文書を作ることもあります。
CBD原料を取り扱う事業者は、書類が本当に正しいものであるかどうか、現地企業に確認を行ったうえで、慎重に進めなければなりません。
麻薬及び向精神薬取締法
■第一章 総則
第一条 この法律は、麻薬及び向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し等について必要な取締りを行うとともに、麻薬中毒者について必要な医療を行う等の措置を講ずること等により、麻薬及び向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉の増進を図ることを目的とする。
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。」(一部抜粋)大麻草に含まれるTHCは、麻薬として規制されています。
国内でCBDの製造、抽出を考えている企業がありますが、「成熟した茎と種子」からもTHCが微量検出される可能性があるため、許可なく企業が国内産CBDを製造することはできません。
今回いくつかの企業から話を伺う中で、「THCが0.3%までなら入っていても大丈夫」「厚労省に許可をもらった原料を使っているから大丈夫」「日本で買える原料なら厚労省とか麻取で検査しているはずだから、とにかく安いものを選ぶ」などと、誤った認識を持っている方が複数いました。
CBDビジネスをするには、専門の知識と海外企業との密な連携が欠かせません。ビジネスにグレーゾーンを作らないようにすることが、このビジネスで重要な点になります。
大麻草の成熟した茎又は種子以外の部位(葉、花穂、枝、根等)から抽出・製造されたCBD製品は、「大麻」に該当します。
なお、大麻草から抽出・製造されたかを問わず、大麻草由来の成分テトラヒドロカンナビノール(THC)を含有するCBDは、「大麻」に該当しないことが確認できないので、原則として輸入できません。また、化学合成されたTHCは麻薬及び向精神薬取締法で「麻薬」として規制されていますので、原則として輸入できまん。
CBD原料の種類
フルスペクトラムCBD
■成分
全てのカンナビノイド、テルペン、フラボノイド
■特徴
アントラージュ効果(取り巻き効果)が期待できる。 わずかだがTHCを含む。 精神作用はほとんど、又は全くありませんが、薬物検査を行うと検出されるリスクがあります。
■日本での規制
使用不可
ブロードスペクトラムCBD
■成分
THCを除くカンナビノイド、テルペン、フラボノイド
■特徴
フルスペクトラムオイルからTHCを取り除いたもの。THCはN.D.CBD以外のカンナビノイドも含んでいる。
■日本での規制
使用可能
CBDアイソレート
■成分
CBDのみ(一般に99%以上)
■特徴
大麻草からオイルを抽出後、CBDのみ分離したもの。結晶粉末状。
■日本での規制
使用可能
THCには医薬品的効能効果が見られるため、少量でも厳格にければなりません。そのため、ごくわずかでもTHCを含むCBD原料は小児や高齢者、妊婦が食する可能性も考慮し、エビデンスがしっかるまでは加工食品に入れるのは避けるという動きが海外で見られています。
世界アンチ・ドーピング機構では、CBDを禁止表国際基準(Prohibited List)から外していますが、他のカンナビノイド類は以前禁止薬物のままです。麻由来のCBDは他のカンナビノイド類が混入するリスクがあるため、推奨しておりません。海外ではCBDメーカーがスポーツ団体と連携を取っているケースが見られますが、アスリートがCBD製品を使用する場合、最終的に自己責任となります。CBDアイソレート原料を使用した製品であっても使用する際には十分注意が必要です。
また、CBD原料には植物由来CBDと合成CBDがあります。
植物由来CBD=原料となる麻を粉砕したものをエタノール抽出または超臨界二酸化炭素(C02)抽出法にて、カンナビノイド類オイルを抽出して作られる。
合成CBD=植物由来原料、もしくは化学原料を用いて、混合〜加精製してCBDを作る。